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経済ジャーナリスト 堀 浩司 の “経済コメント”

一週間のニュース解説

 毎日、新聞を読んでいて強く感じるのは、たくさんの情報を私達が得ているように感じていますが、それら、報道される情報をただそのまま受け入れるのではなく、冷静に読みくだかないと、本当の事実がわからないのではないか、ということです。

 12日土曜日の朝刊各紙は、今年の7月から9月の三ヶ月間の国内総生産、GDPが4月から6月に比較して実質年率換算で1.7%増えたという11日の内閣府発表を掲載していました。
 四期連続のプラスという統計結果ながら、我々、一般庶民には、同じく内閣府から発表された小売店主やタクシードライバーらに聞いた街角の景気の状況、「景気ウォッチャー調査」の10月の景況感が三カ月ぶりに悪化しているという結果や、あるいは金融広報中央委員会が今月初めに発表した貯蓄ゼロの世帯が23.8%、四軒に一軒近くが無貯金という報道のほうが実感があります。
 確かに景気の良い企業群や大企業が景気を引っ張り上げてくれると期待したいのですが、収入でも、財産でも、豊な者はより豊に、貧しい者はより貧しくという二極化が急激に広がっているように感じられます。
 18日、朝日新聞朝刊でも、「上場企業の経常利益最高」という記事がありました。弱者も救われる景気上昇であってほしいと願います。

 11月14日の讀賣新聞朝刊では、全国小売酒販組合中央会が約144億円の年金資金を焦げ付かせ、投資資金のほとんどを取り戻せない事態になっていると伝えています。酒販組合中央会は2003年以降、運用資金の8割にあたる約144億円を年6.75%という高金利の外国債権に投資していたところ、投資開始から1年半後に運用先のイギリス企業が破綻し、投資資金の大半が回収不能に陥ったとのことです。
 コンビニエンスストアなどの進出によって売上が激減している酒販小売店の経営者の方々は、憤りとともに、老後の不安を募らせているとも、報道されています。
 最近、「バブルの再来か」などという言葉が、マネー雑誌を中心に私達の目に飛び込んできます。1990年代のバブル崩壊で手痛い経験のない若い女性たちを中心に、投資セミナーが大盛況で、このところの株価上昇で儲け話もちらほら。小遣いぐらい稼げたらとの感覚で、人気が高まっているようです。
 実際、投資信託、個人年金保険、外貨預金を合わせた9月末の大手四大銀行の合計だけでも、約11兆4百億円と半年前に比べて8.6%増えており、また、10月の東京証券取引所一部の売買代金ベースのシェアでは、個人投資家の比率は37%とバブル後半時の1989年より7ポイント近く上昇しています。
 先ほどの小売酒販組合中央会が投資した外国債権も初めのうちは高配当を得ていたのでしょうが、結果は組合員の老後の生活を悲惨なものにしてしまいました。
 「リスク」という言葉を使うと、ちょっとかっこよすぎる気がします。
 投資には、ほとんどの場合、元本保証がないという危険を認識して、投資に回す資金は、少なくともここ数年は使う必要がないという時間的な余裕と、家計の金融財産のうちの三分の一以下を投資にまわすといった量的な余裕をもって望んでほしいと思います。

 15日の産経新聞の朝刊に、アパレルメーカー、ワールドが15日付で上場廃止するのに先立って、14日に株式非公開後の経営方針について記者発表をしたという記事がありました。
 上場による信用力の向上、エクティファイナンスによる投資家からの直接融資の資金調達など、上場のメリットには計り知れないものがありますが、また、その一方で企業買収にさらされる危険、短期的な利益を求める市場の投資家の要望に答えるために長期的な経営視野が狭められるなどの短所もあります。また、一口に上場といっても、東京、大阪などの一部、二部の厳しい上場基準から、かなり緩やかなものまでさまざまな上場があります。
 私の経営指導する中小企業でも、上場を目指す会社があります。しかし、もとから上場は困難なのに、中小企業としては高額な数百万円のアドバイザー料を払い、結局は上場できなかったという会社もありました。
 後々よく考えてみますと初めから上場など出来ないのにコンサルタント会社は、アドバイザー料だけを目的に話を持ちかけてきた感じです。世の中の、そして経済の一方的な大きな流れだけに気を止めるのではなく、各企業にはそれぞれの生き方があることを、このアパレルメーカー、ワールドの上場廃止は伝えているように思います。

 16日の讀賣新聞はじめ朝刊各紙は、小泉首相が来年度の新規国債発行を「今年は税収が伸びそうなので、歳入・歳出の改革を一層進め、国債発行額をできるだけ30兆円に近づけたい」と述べたという記事が掲載されていました。2005年度末の国債発行残高は約538兆円で、国民1人あたりの計算をすると約422万円という金額になります。
 家計では、収入が減ったら、まず、第一にするのは節約ですが、国、地方の財政ではなかなか進まず膨大な借金になってしまいました。ただ、ここで冷静に私達が注意を払わなければならないのは、国や地方の借金だけが報道され、「ある程度の増税もやむなし」という空気が作り出されていることです。家計で考えても、企業で考えても、借金だけがあるはずではなく、資産もあるはずです。
 どうして、マイナスの借金だけが報道されるのか、何かの意図さえ感じてしまいます。
 国債を含めた国の借金は2004年度末で730兆円、これに対してある経済誌によりますと、金融財産は480兆円、差引いた純債務は250兆円といわれています。これは、GDP国内総生産に対する比率で比較するとOECD経済協力開発機構に加盟する先進国の中でも悪い数字ではありません。
 健全財政を目指すのは当然ですが、増税論議の中、情報をそのまま受け入れるのではなく、冷静な分析と判断が私達に必要だと思います。

 16日の夕刊では、日経新聞はじめ各紙は、首相の諮問機関である政府税制調査会が来年度の税制改正答申を固めたと報じ、その内容を掲載していました。定率減税の2007年度全廃、道路特定財源を一般財源に移行、長者番付の廃止など、具体的な内容が目を引きます。
 小泉内閣以前の政府税制調査会答申といえば、どちらかといえば税制の長期的展望について骨格を固めるといった役割を担っているという感じで、税制が大きく横道にそれないように大局的な観点から指針を述べるというものでした。最近の政府税制調査会のマスコミに対する姿勢を見ていますと、政府税制調査会が税制を決めていくのだという雰囲気を感じてしまいます。
 たとえば、ビールメーカーが麦芽以外の原料を使うことによって税金負担を少なくし、価格の引下げを図った「第3のビール」に対して政府税制調査会は、「酒文化を損ない、税制に対する挑戦だ」と嫌悪感を表明していましたが、政府税制調査会は首相に対する諮問機関であり、首相に意見具申する機関です。
 私の周りの多くの人たちは、政府税制調査会の答申内容で既に税制改正が決まったと勘違いをしている人が少なくありません。税制は、法律に基づいて決められ、法律に則って施行されるもの。税制改正は春の通常国会で決まるという解説記事も必要だと思いました。

 最後は、のんびりとした記事を見つけました。16日の朝日新聞に「老後の生活費節約、東南アジア人気」という記事です。一週間前の日経新聞夕刊にも、「定年退職後はアジアで悠々自適」という同じような記事がありました。物価が安くて気候も穏やか、現地で家事を手伝うハウスキーパーを雇っても、生活費は年金で賄えるという内容です。
 ちょっと日本を離れ、海外に長期滞在し、外国から日本を見てみるのも、また、日本を知る上では有意義かもしれません。羨ましさ半分でその記事を読みました。

(NHKラジオ「新聞を読んで」2005年11月19日ON AIR)

経済ジャーナリスト・ファイナンシャルプランナー・経済講演/堀 浩司

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