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経済ジャーナリスト 堀 浩司 の “経済コメント”

一週間のニュース解説

 このところ、少子化対策の記事をよく見かけます。
 13日、土曜日の朝刊各紙は、子育て支援税制として、政府の税制調査会が、子供の数に応じた一定額の税額を減税する「税額控除方式」の導入を求める方向でほぼ一致した、と報じています。また、16日のやはり朝刊各紙は、政府の少子化社会対策推進会議の専門委員会の報告が掲載されていました。
 「働き方の見直し」や「地域の子育て支援体制の整備」が報告の柱で、経済支援策については具体的な報告はなされていませんでした。
 私自身、現在、高校生から大学生まで、4人の子供を育てている親としては、義務教育後の爆発的な教育費の負担の大きさが一番、きつく、不安に思っています。
 以前に、大阪の全日(ぜんにち)制の府立高校では、年間授業料14万4千円の減免を受けている生徒が2004年度、24.4%つまり4人に1人に上っているというお話をしました。16日の毎日新聞夕刊大阪版のトップ記事に、その減免を受けている生徒の割合について、進学校の多くが10%未満だったが、他の高校では50%を超えたところもあったという、お金をかけないと良い教育が受けられない、逆に進学校でレベルの高い教育を受けているのは、高収入のご家庭の子どもが中心というショッキングな内容ということになります。
 平成16年版の「少子化社会白書」でも、子供を持ちたいが持てないのは「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」という経済的理由が突出しています。15日に新聞各紙に掲載された川崎厚生労働大臣が表明した2050年の合計特殊出生率1.39という目標数値、一人の女性が生涯に産む子供の数、もっと、世間に耳を傾けた少子化対策でないと、目標数値1.39には遠く及ばず、ますます少子化が進むのではないかと懸念します。

 子供と言うと、お産休止の病院が増えているというニュースが気になります。
 産婦人科医が不在となり島根県の隠岐島では、先月から島内で出産ができなくなったと報道されていました。14日、日曜日の各紙は、11月から医師2人が県立中央病院から派遣され、島内でのお産が再開されると報じています。ただ、10月までに出産予定の妊婦の方、40人は、今後も本州に渡り出産しなければならないということです。
 同じ日の朝日新聞は、一昨年の秋に産婦人科・産科を掲げていた全国1665の病院のうち、その8.3%にあたる138病院が先月末までに分娩の取扱をやめていると報じています。
 産科医不足は地方だけでなく、大都市でも深刻な問題となりつつあります。医療訴訟のもっとも多いのは産科医でもあり、さらに病院勤務の場合、過酷な労働条件もあって、急激になり手が減っているのが原因と伝えられています。
 産経新聞で、シリーズものの「医療を問う」という記事が連載されていました。最終回19日の朝刊の見出しは、『このまま荒廃放置すれば崩壊 産科、小児科医がきえてしまう』というヒヤッとするものです。その記事の中で、女性内科医は「一部に金儲けに走る医師がいることは否定しませんが、ほとんどの医師は病める人の役に立ちたいという気持ちで治療にあたっています。最近の医療事故をめぐる、いわれのない非難が、現場で寝食を忘れて仕事をしている医師に無力感、閉塞感をもたらしています」とコメントしています。
 また、ある県立病院に勤める男性医師は、「医師だけが踏ん張っても無駄です。とことん医療状況が悪化して、みんながその危機を理解することの方が大事かもしれません」と、もう、あきらめともとれるコメントをよせています。私の友人にも、産婦人科医がいますが、誠心誠意、治療に努力した結果が医療訴訟では、報われないと嘆いていました。
 医療ミスは、あってはならないことです。しかし、それを1人の医師だけに委ねるのだけでなく、医療ミスが起こらないようなシステム作りを考えていかなければ、本当に私達が必要とする責任を持って患者に接していただけるお医者さんがいなくなってしまうように思えてなりません。

 昨年も、同じこの時期に「新聞を読んで」を担当させていただきました。そのとき、一つ危惧していたことがあり、そのお話をしました。それは、高額納税者の公表制度、正式には公示制度と言いますが、この制度が廃止されようとしているという話でした。
 いつもですと、この5月、1千万円を超える所得税を支払った人、いわゆる高額納税者が発表され、新聞でも大きく取り上げられていました。個人情報保護の観点から、犯罪に利用される可能性があるからという理由で、法律を改正してこの高額納税者の公表制度が廃止されてしまったのです。なかには、申告時期を遅らせて、延滞税を払ってまで、高額納税者として公表されることを回避した人たちもいたぐらい、私たちの監視の目がとどく唯一の公表制度でした。
 さらに驚くことには、法人税や相続税の公表制度まで廃止されてしまったことです。会社あるいは企業はいくら私企業(わたくしきぎょう)といっても、社会の公器としての存在でもあります。なのに、なぜ、法人税の公表制度が廃止されてしまったのでしょうか。廃止されることで、好都合な人たちがいるからでしょう。
 そして、さらに残念なことは、私が見渡したところ新聞各紙がこのことについてなんの記事も載せていないことです。制度がなくなったことについては、あまり気づかず過ごしてしまいます。だからこそ新聞では、一般の人たちが気づかないことについても、報道してほしいと思います。

 阪神電鉄株の買収などで注目を集める村上世彰(よしあき)氏が率いる「村上ファンド」が本拠地をシンガポールに移したと、13日土曜日の読売新聞朝刊はじめ各紙が伝えています。移転理由については、なんらご本人からは、コメントされていませんが、彼に近い人のインタヴューでは、「法人税が安いから、各種の情報が入りやすいから」と語っている人もいます。しかし、なぜ今なのか、を考えると、どうも説得力に欠ける気がします。
 14日、日曜日の日経新聞では、「村上ファンドが巨大になったことで株価への影響力が増し、金融当局の監視の目が厳しくなり、やりにくくなったから」、同じ日の産経新聞では、「投資ファンドに対する日本の規制強化の影響を避けるため」とその観測をのせています。今国会で成立予定の金融商品取引法では、証券市場での取引ルールも整備され、投資ファンドの法律ギリギリのところをついてくる株式買収手法にも一部規制がかかります。また、発行済株式の5%を超える株式を買収した場合、その報告が現在の三ヶ月ごとから二週間ごとに短縮され、他の投資家が大きな株の動きを早期に把握できるようにもなります。
 ここ数年間「規制緩和」という方向で社会が動いてきました。しかし、その弊害がいろいろなところで目に付いてきています。数の上では非常に弱い一般の、個人の一人一人投資家を無視したかのような横暴な力、莫大な資金量を背景にした投資ファンドの動きに対しては、ある程度の「規制」も必要だと思います。
 私たちの生活が豊かになり幸せな社会が作られていくための「道具」が、会社であり、株式市場であるはず。「裸の王様」状態のしたり顔で経済を語るのではなく、もっと私たち一人一人が自分自身の視点で、時には我が儘なまでもの発言が必要だと思います。

 最後に、18日の朝日新聞朝刊に、金融広報中央委員会が17日に発表した「子どものくらしとお金に関する調査」の結果が載っていました。マネーゲームを肯定的にみる中学生が30%、高校生になると41%に上り、「世の中でお金が一番大切」と考えている子どもは、中学生で26%、高校生で30%という結果だったそうです。
 もちろん、そうは思わない中高生の方が多いわけですが、経済や社会の仕組みを考えるとき、なんのために経済や社会があるのか、経済、お金優先ではなく人のために経済や社会があること、一番大切なのは人であり、人としてお互いを認め合う社会が一番大事だということ、このことだけは、なんとしても、子どもたちに伝えていかなければならないと思います。

(NHKラジオ「新聞を読んで」2006年05月20日ON AIR)

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