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経済ジャーナリスト 堀 浩司 の “経済コメント”

少子化対策を検証

 なかなか止まらない日本の少子化傾向、先日発表された2005年の合計特殊出生率(1人の女性が15才から49才までに生む子供の数)は昨年をさらに下回り、1.25に。政府内では、少子化社会対策推進専門委員会が、また、各政党でも様々な委員会が設けられ協議されていますが、大企業ではできても、中小零細企業では実施できないような制度ばかりが目に付きます。どれほど効果があるのか疑問です。
 本当に必要な少子化対策はなにかをより具体的に考えないと、とても対策にはなり得ないのではないかと思います。

 内閣府の少子化社会白書では、子供の数を増やせない理由として、複数回答ながら断トツの理由が、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」が62.9%、特に20代では8割以上、30代前半でも7割以上という割合です。
 実際、運良く、幼稚園から大学まで、全て国公立で進んだ場合でも、子供の教育費用は約1147万円という数字。ところが、国公立に進ませる為には、塾の費用が相当かかるというのが現実です。
 少子化対策の第一歩は、具体的な経済支援策を示して子供を産む年齢の夫婦に安心感を与えること。そこで、まずは今、議論が進んでいる少子化対策子育て支援税制はどうなのか、効果がありそうなのか、これで若夫婦も安心ができるのかを考えてみたいと思います。

 支援税制のキーポイントは、ズバリ、「減税」と「増税」の両面から考えること。なんで「増税」なの、という話は、後にして、まずは「減税」から。
 今、具体的に議論されている支援税制のひとつは、子供の数に応じて、一人5万円あるいは10万円と税金そのものを安くするという税額控除方式。ただ、少子化対策とは別に政府は、扶養家族控除を縮小しようという増税案を検討していますので、プラスマイナス、それほど効果は期待できません。サラリーマンの夫の年収が400万円、妻に年間90万円のパート収入があり、子供が二人という家族で試算してみますと、現行の所得税、住民税70,800円が0円になります。しかし、はたしてこの程度の減税額で少子化が止まるのでしょうか。
 もう一つの子育て支援税制は、税金をかける対象を個人ではなく家族の各人として計算することで減税効果があるN分N乗方式というもの。年収1200万円の家庭で試算しますと年間の税金が半分になり、その減税額は761,000円。こちらだとかなり期待が持てそうなのですが、肝心の経済支援が必要な、たとえば年収がその半分、600万円のご家庭ではわずか21,200円しか減税効果がありません。税の専門家として、ここはなんとか、税金の支援策の効果で多少なりとも少子化をくい止めたいところなのですが、今挙がっている減税案では、ハッキリ言って、効果はありません。

 目を海外に転じて少子化対策の成果が出ている国を見てみたいと思います。
 一人の女性が一生涯に子供を産む数、合計特殊出生率については、ほとんどの先進国で低下傾向にあるのですが、10年ほど前に低下傾向に歯止めがかかり、1994年に底だった1.65から上昇に転じ、2003年には1.89まで回復したフランス。フランスの少子化傾向歯止め原因の一番は、「児童手当」が充実していることだと言われています。実は私、現在、大学3年生から高校1年までの4人の子供を育てている親なのですが、義務教育後の爆発的な教育費の負担につぶされそうになっています。
 日本の場合、児童手当は、今年の4月から小学6年生までもらえるようになりましたが、フランスでは、学校に通っていれば20才未満までもらえます。我が家で試算をしますと、日本の場合は、「第1子、第2子が月額5000円、第3子以降が月額10000円」、小学6年生までもらったとして総額432万円。これに対して、もし私達家族がフランスに住んでいたら、「第1子には支給はありませんが、第2子15000円、第3子以降20000円が毎月支給されます。そのうえ11才から16未満の年齢では月額約4000円が、16以上19才までは月額約8000円が加算されます。さらに3人以上の子供を育てていますと、月額約2万円の補助手当が支給されます」。これらの基本的な手当だけでも総額2320万円を受け取ることができます。しかも、日本では「所得制限」がありますが、フランスでは基本的手当には「所得制限」はありません。
 しかし、ここからが正念場です。児童手当を拡充するには、財源が必要です。つまり、増税なのです。本来なら、余計な歳出をカットしてその原資に充てるのが理想ですが、現実問題として、それは難しい。子育てをしている家庭を優遇するというのではなく、結局、他の家の子供も自分たちの将来の年金を負担してくれる。だから、社会で子供たちを育てる。そんな目的がはっきりとしている税金ならばある程度は受け入れても仕方ないという意見もあります。
 また、フランスでは家族給付の約6割を、企業からの拠出金という形でまかなっているという点も見逃せません。
 実際、こんなところまで踏み込んだ議論が政府などの委員会では見受けられません。少子化担当大臣の猪口さんをはじめ、熱心に議論している姿には一定の評価ができますが、委員の顔ぶれを見ていると、経済的にも環境的にも、現在の子育ての環境とはほど遠い人たちばかし。実際に経済的な理由で、家族を増やすことを躊躇している人や子育てに苦労している人たちの声がもっともっと反映されなければ、確実な少子化対策は実現しないと思います。
(MBS「はやみみラジオ!」2006年 6月 1日ON AIR)

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