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経済ジャーナリスト 堀 浩司 の “経済コメント”

社長のベンツは本当に4ドアなのか

 ベストセラーを続ける会計の入門書。中でも、節税の観点やユニークなタイトルに惹かれて『なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?』が、今売れている。そもそも、ほんとうに社長はベンツに乗っているのか?2ドアだとダメで4ドアなら節税になるってホント?

■ 社長の車を企業に直撃したら、意外な結果が!
 なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?』(小堺桂悦郎著)という本が、よく売れているようです。『さおだけ屋はなぜ潰れないのか』(山田真也著)に続き、素人にはとっつきにくい企業会計のカラクリを、ユニークなたとえ話を駆使して、わかりやすく解説しようとする本です。「4ドアの高級外車は会社の経費として認められるが、2ドアのスポーツタイプ車は否認される」とか「中古で買えば償却期間を短くでき、より節税になる」など、車などの固定資産の扱いを企業会計の側面から解説しています。ただ、「社長のベンツは……」と当たり前のようにいうこの本のタイトルに、「おれの車はベンツじゃないけど……」と感じている社長さんも、もしかしたらいるかもしれません。
 ほんとうに世の社長さん方は「ベンツ」に乗っていて、そのベンツはほんとうに「4ドア」なのか。取材班は、ふだん、さまざまな取材でお世話になっている企業の広報に尋ねてみました。いつもに比べてちょっと変わった質問内容に、担当者から「これは何の取材ですか?」と不思議がられたり、プライバシー重視の流れから「社用車といえども個人情報にあたるので」と、コメントいただけない会社もありましたが、事情を説明して聞き出しました。すると、意外な結果が出てきたのです。

■ 世の社長さんは、ベンツには乗っていない!
大手百貨店はクラウンでした。車格があり、安心して乗れるからという理由です。
大手携帯電話会社は、高級感と環境性能を考慮して、セルシオ。
大手塗料メーカーも、セルシオ。国内自動車メーカーとの取引関係を重視して決めたとのことです。
大手農業機械メーカーは、こちらも「取引関係がある」という理由でBMWでした。
ほかにも、大手家電メーカーはクラウン。車名を明かしていただけなかった会社も、大手酒造メーカーは「国産車でこそ品位がある」と言い、生命保険会社も「社用車としてふさわしいから国産車」だと言います。
ここまで取材したしたのは大手企業ばかり。もしかして、大企業の社長さんは、ほかの社員の手前ベンツに乗りにくいのかもしれない。「見た目の信用」を大切にする中小企業の社長さんは、高級感あふれるベンツなのかも……。そう考えて今度は、大阪商工会議所に加盟する中小企業に、ランダムにお聞きしました。
「忙しくて、こんな電話には対応できないよ」と断られたりもしたのですが、何とか、30社から回答を得ることができました。そのうちベンツは何社あったか……
わずか1社だけ。しかも、4ドアではなく、2ドアでした。
 「社長専用の車はない」という会社が21社もあり、そういった企業の社長さんは、電車通勤をしたり、タクシーを使用したりしているようです。
 結局、大手中小合わせて65社に取材して、有効回答を得た15社のうち、ベンツは1社だけ。クラウンが6社、セルシオが4社、他、レクサス、ジャガー、ポルシェ、BMWが1社ずつという結果。
 いったいどうして、社長の車は4ドアのベンツじゃないのか? 企業会計に詳しい、税理士の堀浩司さんに聞きました。
「プライベートで乗っている方は多いですが、今どき、社用車としてベンツに乗っている社長は少ないですね。今の企業は、燃費などの効率や、他の企業とのおつきあいなどを総合的に考慮して、国産の車にするケースが多いように思います。法人であればあまりステイタスは必要ありませんしね。高級外車を社用車にして、経費で落としているのは、私の知る範囲では、同族会社で、個人と法人の区別がつきにくい企業くらいです」
 と、私たちの調査を裏付けるような感想を述べました。

■ スポーツタイプの2ドア車でも節税になる?
 「最近の会社は『いかに資産を減らさないか』を重視しているので、節税になるからといって、わざわざ高級車を買ったりすることは減ってきています。リースのほうが節税できるという声もありますが、リースのほうが現金で買うよりも高くつくことは間違いないので、資金的余裕があるなら現金で購入することが多いのではないでしょうか」
 また、国税当局も形式よりは「実質」を重視して判断するようになり、節税の抜け穴もドンドンふさいでいるそうです。
 「2ドアか、4ドアかはあまり関係ありません。たとえスポーツタイプの2ドア車でも、バリバリ社用で使って、それが会社の信用を高めていると判断されるものならば、税務申告上も、なんら怖くはありません」と堀さんはキッパリ。そのうえで、こんなふうに付け加えました。
「会計を、身近に解説していただくのはありがたいのですが、あまり節税の視点を強調されると、クライアントから『うちの税理士先生は固いことばかり言う。あの本には、もっと節税できると書いてあったのに』とぼやかれることもあります。申告書を書くだけでなく、税務調査まできっちりフォローしなければならない立場のわれわれでは、なかなかあそこまでは言えません」
 企業にも余裕があって、体面を気にしていたよき時代は、今となっては昔のこと。バブル崩壊を経て、ものごとを実質で判断する、ドライな世の中に変わってしまったようです。致し方ありませんが、出世の夢もなくなってしまったみたいで、すこし寂しい気もします。
(朝日放送「ムーブ」制作班・編集/出版社アスコム)
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