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経済ジャーナリスト 堀 浩司 の “経済コメント”

日銀の利上げ見送り、その真相とは

 金利というのは、経済に大きな影響を与えます。私たちの預貯金の金利、住宅ローンの金利、企業が設備投資をする場合に借りるお金の金利。しかし、最近では実際の経済活動で使われるお金というよりも投資マネーのお金が敏感に反応します。日本の金利が安ければ日本円を使って投資をする、したがって日本の金利の動向は、各国のお金を交換する時の為替レートにも影響します。また、金利が上れば株式投資をするよりも利息がもらえる債券にお金が流れます。今回、「世界各国の日銀に対する信頼が損なわれた」というようなマスコミの報道がありますが、それは、そんなお金儲けの投資家集団にとってあてが外れたということなのです。「世界各国の信頼」という抽象的な表現に、気をとらわれると本質が見えなくなってしまいます。

 さて、1月の17日と18日に開かれた日銀政策委員会・金融政策決定会合で、日銀の政策金利の利上げを今回はしないと決定されました。1994年に金利が自由化され、現在は日本銀行が直接、金利を決めることが出来なくなっています。そこで、銀行間で日々融通し合うときの金利に日銀が目標を定め誘導しているのが政策金利です。そして、この政策金利がいろいろな金利に影響を及ぼすことにより、日本の金利をコントロールしているわけです。

 では、なぜ、今、超低金利0.25%を目標としている政策金利を引き上げようとしたのか。日本銀行は、金利や貨幣の発行を通じて日本経済をコントロールしていくのが仕事です。金利に限ってのお話をしますと、景気が悪くなると企業の借入金利や住宅ローン金利を下げて企業に設備投資を促したり、住宅を建てたり買ったりする人を増やして景気を活発になるようにします。逆にバブルの時のように景気が過熱してインフレ傾向になると金利を上げて経済活動にブレーキをかけます。しかし、もう、バブル景気以降の十数年も続く不況で金利は超低金利を継続していて、これ以上金利を下げようとしても下げられない状態、つまり日銀がなにもできない、金利による日本経済のコントロールができない状態が続いていたのです。そこで、数字上は景気が上向きになり出しているということで、昨年7月14日に限りなくゼロに近かった政策金利を解除しました、これがゼロ金利政策の解除です。さらにいざなぎ景気を超える経済成長が続いているということで、日本銀行としては、経済コントロールの日本銀行の武器を取り戻すべく、少しずつ金利を引き上げておきたいのです。

 だったら、なぜ今回は金利引上げを見送ったのでしょうか。日本銀行内では、金利を引上げることを「勝ち」、金利を引下げることを「負け」というように、日本銀行の武器である金利を高めておくことがより強力な武器となるのです。ですから、早く上げておきたいのはやまやまなのですが、前回12月の会合での「個人消費や消費者物価の面で弱めの指標が出ている」として利上げを見送った状況と1月はあまり変わっていません。先ごろ発表された昨年11月の生鮮食料品を除く全国消費者物価指数も前年同月比0.2%増とゼロ近辺に張り付いています。個人消費にも少しかげりが見える状況です。また、7年前の2000年8月に政府の反対を押し切って日銀がゼロ金利政策解除を強行し、その結果、景気が失速してしまいました。そのような苦い経験もあり、今回も利上げを見送ったのです。

 政府、自民党の反対の声に屈したとの報道もありますが、どうなのでしょうか。1998年の日銀法の改正で日本銀行はほぼ完全な独立を手にしました。政府からその国の中央銀行が独立しているのは、お金を使う者が、そのお金を自ら発行することが出来れば、足らなければいくらでもお金を印刷してしまいます。第一次世界大戦後のドイツは、賠償金を支払う為にお金の増刷を続け、何千倍にまで物価が跳ね上がるハイパーインフレを引き起こし、国民を苦しめました。そこで各国とも、中央銀行に独立性を持たせているのです。日本も旧日銀法の時代は、現在の財務省に役員の解任や業務命令の権限があったため、財務省や政治家の発言が日銀の金融政策に影響を与え、日銀のことをその弱腰から「大蔵省日本橋本石町分局(ニホンバシホンゴクチョウブンキョク)」と揶揄されていたこともありました。しかし、新法では、財務省による予算の認可があるぐらいです。議決の延期を政府が求めることが出来る議決延期請求権も再考を促すだけで、2000年8月のゼロ金利政策解除の時も日銀政策会議の決定で退けられています。

 今回、利上げ見送ったことについて、経済界には驚きの声は上っていません。帝国データバンクの全国1万社を対象とした企業意識調査でも、時期尚早と答えた企業が6割を超えていました。実際に経済に携わっている者としても、預金金利がほとんど変わらない金利引上げでは、ローン金利、企業の借入金利の引き上げによる景気失速の可能性のほうが大きく、やはり、日銀の勇み足という感じがします。

 ただ、マスコミの過熱報道の割には、一般国民に理解されていない気がします。まず、日本銀行が説明責任を果たしていないことです。98年の日銀法改正で日本銀行には大きな独立性が与えられました。それは、日本経済の大きな舵取りをするには大きな長い視点が必要だからです。時には、私たち国民に一時的な負担をかけるような施策もあります。そのためには、私たち国民に理解をしてもらうこと、日銀に対する国民の信頼が必要です。しかし今回、利上げがなぜ必要なのかの説明がまったくなされていません。「景気が回復傾向にあるから、利上げをする」では、説明になりません。この説明は日銀内部のものです。金利を引き上げることが日銀の大命題であり、景気が回復してきたから利上げをしようというふうにしか聞こえません。私たち国民にとってなぜ今、利上げが必要なのかの説明を日銀は徹底的にすべきです。日本銀行が行う金融政策は、政府の財政政策と異なり選挙で国民の審判を受けることもありません、また、最高裁判所の裁判官のように、日銀総裁をリコールする権利も国民にはありません。国民に説明できないような施策ならばする必要はありません。

 第二に、日本銀行の信用です。昨年は、株式投資で損をされた方も結構いらっしゃいました。そんな中、福井総裁が村上ファンドに投資し100%以上の配当を得ていたこと、さらに朝日新聞の報道では、福井総裁専用のファンドが用意されていたことが報道されました。現役の中央銀行総裁が出資しているというのは、村上ファンドの広告塔としても機能していたフシもあります。新日銀法で、日銀の理事を除く役員は、破産や禁固刑以上の刑を受けた時などを除き、在任中はその意に反して解任されることがないくらい信任の厚い役職です。国民から信頼を得るためには、自らの襟を正す必要があると思います。

 また、日本を含め各国の投機筋が、金利が動くことによる新たなお金の動きで儲けたいという思惑を日本のマスコミが何も理解せずそのまま彼らの声を報道し、金利引上げ報道を過熱させている面もあると思います。私たち、一般の国民としては、我々自身にとって「金利引上げ」がどのようにかかわってくるのかという視点を大事にすべきだと思います。

(RCC中国放送(広島)「寺内優のおはようラジオ」2007年01月22日ON AIR)

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