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経済ジャーナリスト 堀 浩司 の “経済コメント”

円安の原因と今後の影響

 円安というのは、日本の円の価値が外国のお金の価値に比べて下がっている状態、安くなっている状態のことです。私達が円安、円高を一番実感するのは、海外旅行で日本の円を例えばアメリカのドルに換えるとき、2年前の2005年始めごろなら1万円なら$97ぐらいに換えられたのに、今なら$84ぐらいにしか交換してもらえません。同じ1万円でも買える物が少なくなります。
 さて、どのぐらい円安なのか、この1年間で見ますとドルに対して約3%、ユーロに対して約11%安くなっています。どちらかというと欧州通貨のユーロに対して、より顕著に円安になっています。
 なんで、円安になってきているのか、いろいろな要素が絡み合っているのですが、一つには1400兆円といわれる個人の金融資産の一部が海外の金融資産に向かっていることが挙げられます。2006年末の株式投資信託の残高は65兆円、そのうちの4割の26兆円が外国の債券や株式を運用する投資信託で、この2年間は年間7兆円ペースで増加しています。外国の債券、株式の購入には通常外国のお金、例えばドルを用意しないといけませんから、日本の円を売ってドルを用意します。売られる方のお金の価値が下がり、求められるお金の価値が上ります。
 また、もう一つの原因は、「円借り取引、円キャリートレード」といわれる日本の金利が非常に低いことを原因とするものです。ヘッジファンドなどの大きなお金を動かす投資家は、金利が非常に安い日本でお金を借ります。そして、そのお金で海外の金利の高い金融商品を買います。日米間では金利差だけで年5%以上ありますから大きな利益を獲得できます。さらに借りた日本円を売って例えばドルを買って外国の金融商品を買うわけですから、たくさん売られる円の価値が下がり、円安になります。借りたお金を返す時、円安ですと同じ金額のドルでもより多くの円を手に入れることが出来ますから、ドルで考えた場合少ない返済額で済むため、ここでも利益が発生します。
 日本にとって、「円安」は、メリットなのでしょうか、デメリットなのでしょうか。
 私は先週マレーシアに行っていたのですが、現地通貨のマレーシアリンギッドに両替する時、同じ1万円でも以前ならRM330だったのが今回はより少ないRM280しか交換できず、損をした気になりました。デメリットとして、円の価値が下がる円安は、物を買う力が下がります。日本は海外から石油や食糧を多く輸入していますから、その値段が高くなります。そして、それは物価上昇、インフレになる傾向があります。でも、実は今の日本は、ある程度インフレが必要な経済ですから、デメリットではないかもしれません。
 メリットはなんといっても、外国に日本の製品を売る時の儲けが多くなるということです。例えば、1万ドル、為替レート100円で売っていたものが、円安で為替レートが120円になったときを考えてみます。100円の為替レートでは1万ドルは100万円の売上ですが、円安になって120円の為替レートになると120万円の売上となります。同じ製品を売っているのに円安の効果で20万円も利益が増えることになります。ある新聞社の集計では2007年3月期の上場企業の経常利益は4期連続で最高益を更新することが確実になり、その大きな要因は「円安」による恩恵が大きいと報じています。海外市場が好調な自動車産業などでは、例えばトヨタ自動車などは年明けの円安だけで500億円程度の増益効果があるようです。
 円安で利益が増えますから、ある程度、価格を抑えても、つまり値引き販売をしても十分に収益を確保できます。その分、国際競争力がさらに高まることになります。
 世界は、日本の円安をどう見ているのでしょうか? 2月9日、10日にドイツのエッセンで開かれた先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議G7で円安是正に関する声明が発表されるのではないかとの観測がありました。自動車などが競合するドイツをはじめ欧州勢は円安による日本製品の国際競争力上昇に強い不満をもっているからですが、アメリカの円安容認で声明には盛り込まれませんでした。しかし、アメリカの労働組合や農業団体の圧力でアメリカ議会は円安の是正を求めています。
 つまり、その国の通貨が安いということは国際競争力が強くなり、他の国の国際競争力を弱める結果になるわけです。そこで、通貨安の国に対して、他の国が通貨安の是正を求めることになるのです。
 世界の工場と言われている、中国は目覚しい経済成長を遂げています。20年程前は1人民元が150円から160円でした。ところが経済成長を目指して1994年に対ドル固定相場制を打ち出し、中国元の大幅切り下げを実施したのです。その結果、1人民元は13円ほど、以前の10分の1以上も引下げられました。海外からの企業進出の場合、例えば700元、日本円で11万円ほどの給料がいっぺんに1万円になってしまったわけです。このコスト安で日本企業をはじめ外国企業が大挙して進出したわけです。しかし、現在ではこの人民元安に対して、中国製品が広く世界に安い価格で出回りすぎているということで、各国は是正を求めています。これに対し、中国はほんの少しだけ元を切り上げただけで、かたくなに人民元安を堅持しています。中国の経済成長には、景気をよくするためには、人民元安を手放せないからです。
 では、日本の場合は、どうなのでしょうか。ドイツで開かれた先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議には、日本から尾身財務大臣と福井日銀総裁が出席していますが、その政策には違いがあります。円安是正による円高+金利上昇で景気にダブルで打撃を与えかねないとする政府と欧州発の円安批判、円安を支えている日本の超低金利政策批判を追い風に金利引上げを図りたい日銀という構図です。
 我々、一般人からすればやはり、まだまだ世間一般には感じられない景気回復を図っていくために、現状の円安持続という選択を続ける必要があると思います。ドルに対し、10%の円安が1年続くと、輸入高と相殺しても日本の実質国内総生産(GDP)を0.27%押上げる効果があるとの総理府の試算もあります。経済は我々の生活が良くなるためにあるもの、政府の政策もそうでなければなりません。
(RCC中国放送(広島)「寺内優のおはようラジオ」2007年02月20日ON AIR)
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