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経済ジャーナリスト 堀 浩司 の “経済コメント”

日銀金利引き上げの決定について

 日本銀行が、21日の金融政策決定会合でゼロ金利解除後、7ヶ月ぶりに政策金利を0.25%引き上げ、8年半ぶりに0.5%としました。マスコミでは大々的に取り上げられ、9人の政策委員の中で、ただ一人反対を表明した日銀執行部の岩田日銀副総裁について、その人脈や評判なりがスキャンダラスに報道されている場面もありました。また、「政府対日銀といった対立の構図」や「次の一手は」といった興味本位の報道が気になります。やはり私達のくらしにとって今回のそして、これに続く利上げがどうなのかという視点が、私たちにとって一番大切だと思います。

 政府も日銀も、景気を良くしたいという点では、一致していると思います。私利私欲のために政策金利をどうこうするという考えはありません。日本銀行の仕事は、まず、日本のお金、貨幣の管理すること、二番目にその貨幣の発行量を調節することで景気をコントロールすること、そして三番目が金利を使ってやはり景気をコントロールすることです。長く続いた、あるいは私なんかはまだ続いていると感じている不況のために、日本銀行の二つの、景気コントロールの道具である貨幣の発行量そして金利のコントロールとも使い果たし、もう日銀にとって景気コントロールの手段がなかったのが一年前の状態です。日銀としては、その景気コントロールマシーンを早く使える状態に戻しておきたいということで、貨幣発行量については昨年3月に量的緩和策の解除を、さらに金利政策については昨年7月にゼロ金利の解除を続けてうちだしたわけです。しかし、まだまだ景気コントロールマシーンとして使えるほどの状態ではないので、徐々に使用可能な状態にしておきたいのが本心です。これに対して、日本銀行と違い選挙でみそぎを受ける立場の政府としては、実感としてはまだまだ乏しいが数字上では景気回復が進んでいるといわれている今、夏の参議院選挙を控え、2000年の速水前総裁時代のゼロ金利解除の時のように利上げにより景気が落ち込むようなことは避けたいという思惑があります。

 では、私たちの暮らしには、日銀の金利引上げがどう影響するのか。まず利上げを考えるときにそのメリット、デメリットを考えてみなければなりません。メリットとしては、預金金利の引き上げです。さっそく大手行を中心に来週月曜日の26日から普通預金金利を0.1%から0.2%へ引き上げることを決定しています。また、定期預金も一年物で現在の0.25%程度の金利から0.1%程度引上げることを検討しだしています。昨年7月のゼロ金利政策解除の際は普通預金金利を年0.001%から0.1%への引上げでした。歴史的な超々低金利からは脱しているものの、まだまだ、1%にはるかに満たない金利です。これに対してデメリットは住宅ローンなど金融機関からお金を借りるときの金利の引き上げです。第一生命経済研究所の試算では、今回の政策金利0.25%の引上げで、家計全体の受取利息の増加分はおよそ6645億円、住宅ローンの金利負担増加分約1778億円を差引いても約4866億円潤い、計算上は1世帯あたり年間1万400円の所得増になるといわれています。しかし、貯蓄が多い世帯と住宅ローンを抱えている世帯は同じではありません。預貯金のない世帯が23.8%、ローンのある世帯が41.4%という現実を考えますとここにも世代格差、世帯格差があり、実は恩恵を受ける世帯は僅かで逆に負担が増える世帯が多いのではないかと危惧します。

 住宅ローンについて考えてみますと昨年7月のゼロ金利政策解除による政策金利0.25%の引上げだけでも、ローン金利はそれ以上に引上げが進みました。1年半ほど前に2.63%だった全期間完全固定金利の住宅金融公庫が支援するフラット35の平均金利が既に、今月は3.126%に上っています。金利上昇幅は約0.5%。さらに今回の引上げで金利が引き上げられるのは間違いのないところです。また、住宅ローンの場合借入額が多いのでもろに金利の影響を受けてしまいます。3000万円を35年間で借りている場合、0.25%の金利アップで年間48000円ほど、1%の金利引上げでは、年間204,000円、月額17,000円の負担増となります。さらに金利上昇が続けば、マイホームを手放さざるをえない人も出てくる可能性があります。講演会で金利のお話をしていますと、講演の後、深刻な顔をして相談に来られる方が多くなってきました。3年固定や5年固定といった最初の期間だけ金利が決まっているローンで借りられた方々です。固定という言葉に全期間金利が変わらないと思って、資金計画を考えていたところ、実は期限が来たらまた金利を見直すものだったと後で気が付かれるケースなのです。金利が徐々に上っていけば払えない、どうにかならないかというご相談ですが、なかなか解決策は見つかりません。これを自己責任だと言ってしまうのは酷な気がします。

 一方の企業はどうでしょうか。日経新聞のアンケートでは、大企業では50%の企業が影響は無い、ある程度のプラスになるが12%ということです。しかし、大企業と違い資金調達の方法が金融機関からの借り入れに頼らざるをえない中小企業では、今回だけの金利引上げ決定だけでなくこれから続くと予想される金利上昇について強い警戒感を持っています。

 さて、利上げ決定後の為替と株価ですが、円安そして株高に変わりがありません。これは、もともと今回の利上げ幅が0.25%と小幅なものということはマーケットも分かっていた事で、利上げ後の日本の政策金利0.5%はアメリカの政策金利年5.5%、ヨーロッパ3.5%とくらべて突出した低金利にはかわりないためです。それよりも記者会見で今後の利上げについての質問に福井総裁が「徐々に、ゆっくりと進めていく。」と答えていることに反応しているのです。つまり、ここ当分、日本はさらに低金利状態が続くということが宣言されたわけです。

 もう一度、私達の暮らしへの影響を考えてみますと、金利引上げの積極的な理由が乏しいように感じてしまいます。景気が回復基調にあるから金利引上げを実施するというのではなぜ金利引上げをしなければならないのかの説明にはなりません。私たちの暮らしのために積極的な理由が無く、そのことで困る人が多く出るというのであれば何のための政策なのでしょうか。弱い者を助ける、心の通った政策を実行してほしいものです。
(RCC中国放送(広島)「寺内優のおはようラジオ」2007年02月23日ON AIR)

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