経済ジャーナリスト 堀 浩司 の “経済コメント”
今年の経済を振り返る
今年の株価の動きについてはどのような感想ですか?
個人投資家の日本株離れ 2006年9千億円買越 → 2007年2兆6千億円売越
「何が起きているかわからない」と感じる投資家が増えた
→ 家計の外国証券保有2007.09初めて10兆円突破
個人シェア約26%(前々年38%ピーク) → 外国人61%過去最高 外国人動向次第
株価といえば今年、中国(上海)の株価急落が全世界に広がるというニュースがありました。
今後は中国経済が世界に与える影響が大きくなると思うのですが・・・?
・ 北京オリンピック(2008.08)、上海万博(2010) 2003以降成長率10%台
・ 株式と不動産の資産バブル 実質金利(名目金利3.87%−インフレ率6.5%)マイナス
・ 世界主要株価指数年初来上昇率ベストパフォーマンス
(1) 上海B株(外貨建て)指数177%、(2) 上海・深圳指数155%、(3) 上海総合指数96%
11.05 中国石油化工(ペトロチャイナ)中国本土市場上場
単独企業時価総額
1. ペトロチャイナ9660億米ドル(109兆円) 2. エクソン・モービル(米)4877億米ドル(55兆円)
株式市場時価総額(11.05)
中国株式市場約538兆円←→東証1部514兆円
・ 日中貿易額(輸出入合計) 2006年25兆4300億円 日米貿易額を超えた
中国の世界経済、日本経済に対する影響力はさらに拡大する
数、量で対抗してもかなわない。
中国の経済の渦に巻き込まれてしまう。
→ 日本は質、技術で。
今年の日本経済を直撃したのは「原油高」だと思うのですが、
この「原油高」についてはどう思いますか?
冷静に原油の価格を考えると
(1) 11.29日本石油鉱業連盟(2005年末時点) 生産可能年限68年
→ 中国などの需要急増を考えても急騰するほどの逼迫ではない
(2) 原油採掘コスト→深海油田、気象条件が厳しい油田1バレル30ドル程度
需給バランスからの急騰ではない→投機資金の流入
→ マネーゲームが終わらないと高価格水準の原油価格は続く
エネルギー自給率 日本17%(原子力を除くと4%)、米国73%、中国94%
政府が本気でエネルギー戦略に取り組まないと、
私たちの生活はマネーゲームに翻弄され続ける
アメリカの低所得者向け住宅ローン「サブプライムローン」の焦げ付き問題が世界の金融界を揺るがしました。
これまでの一連の「サブプライムローン」問題についてはどのような感想を持っていますか?
アメリカは金融大国そして先進国
2002年 日本の銀行不良債権処理(5.1%)よりも損失額GDP比軽微(1.13%)
日本と違い素早い対応策
12.06 ブッシュ米国大統領 返済に苦しむローン借入者に5年間金利凍結
12.11 米連邦準備制度理事会(FRB) 最重要政策金利フェデラルファンド(FF)金利
12.12 米連邦準備制度理事会(FRB)、欧州銀行(ECB)等5中央銀行強調資金供給
BRICs 中国、ロシアの高成長国の世界経済リカバリー(デカップリング)
ゴールドマン・サックス 07.11月期過去最高益 サブプライム逆ばり
GS元会長ヘンリー・ポールソン現米財務長官の存在?
→ いずれ収束する問題、日本としてはもっと先に目を向ける必要がある。
今年は企業の合併・買収(M&A)が進みました。
これまでのM&Aの流れについてはどのような感想を持っていますか?
(1) 業界再編 寡占化そして国際化での有利性追及
国内最大損保グループ・ミレアホールディングス 英国キルン社を約1060億円で買収
全日本空輸、日本通運、近鉄エキスプレス 国際貨物事業提携
新日鉄、住金、神鋼 相互出資拡大
日本の技術をほしがる世界最大アルセロール・ミタル牽制
アルセロール・ミタル 元々インドの会社。買収、買収で世界一の鉄鋼メーカーに。
グローバル化の時代では避けて通れない流れ。
しかし、大規模企業のみが生き残る経済環境でなく、
小粒でもピカッと光る企業が生き残れるような政府の対策も必要。
最後に来年の日本経済について一言お願いします。
今、「第二期世界生産拡大期」
日本のものづくりは今なお最強 鉄鋼製品を世界が競って買いにくる
ハイブリッド車/日本車が独占 太陽電池/世界の半分は日本製
工作機械/世界シェアの30% 造船30年ぶりの活況2010年まで受注いっぱい
マネー至上主義が、食品偽装、耐震偽装、期限偽装を招いた
お金に目がくらんで、人のことを忘れた結果
日本が世界の中で優位性を保てるのは技術
農業を含めた物作りを大切にする政策を実行すれば日本経済は明るくなる
経済にも、「心」が必要。
(RCC中国放送(広島)「寺内優のおはようラジオ」2007年12月28日ON AIR)