経済ジャーナリスト 堀 浩司 の “経済コメント”
高騰続く原油価格と日本経済、私達の暮らし
NY商業取引所先物原油価格9日時間外取引一時1バレル126.27ドル市場最高値更新
9日石油情報センター発表レギュラーガソリン全国平均価格159.6円長野県等19都府県160円突破
どうしてこう原油価格が高騰を続けるの?
原油価格10年前比10倍以上(1998年12月10.35ドル/バレル)
昨年比
2倍(2007年 5月60ドル/バレル台)
高騰を純粋に考えれば
・ BRICs等新興国経済成長で需要急増
→ 国際エネルギー機関(IEA)4月月例報告(4.11)
2008年世界石油需要見通/米国成長鈍化で下方修正 前年比1.5%増日量8723万バレル
・ 「地政学リスク」(アフリカ産油国で紛争が起きると原油生産に支障が出るというリスク)
「オイルジレンマ」山下真一著2007年6月出版「政情不安なナイジェリア・テロ情報はその代表例」
ある新聞報道2008.5.08「1月から4ヶ月で2割も上昇している急騰の直接のは、
ナイジェリアで油井が武装勢力に爆破され、世界的な供給不安が広がったことだ。」
ナイジェリア年間石油生産量全世界の3.0%
・ ピークオイル論 コリン・キャンベル(大手石油会社を退職した英国人地質専門家)
1980年代「1990年までにピークアウト(地質学的限界、資源量的限界)が来る」
2005年「2007年にピークアウトが来る」、現在「2010年にピークアウトが来る」
→ 石油鉱業連盟2007.11.22石油可採年数37.4年(2005年末時点)
需要増、生産アクシデント、ピークオイル論では説明できない高騰
⇒ 米国経済の不安感から株式、為替の金融資産から
原油、穀物の実物資産へ投機マネーが移動
投機マネーの金儲けで私達の生活が苦しくなるのは腹立たしい
どこまで、原油価格は高騰を続けるのか?
米証券大手ゴールドマン・サックスのアナリストチーム予想
大規模供給途絶等悪条件が重なれば、2012年までに200ドル/バレルに達する恐れも
大規模供給途絶等悪条件がなければ2010年110ドル/バレル
瞬間的最高値135ドル/バレル
実需の伴わない高騰 実は投機筋はいつ底が抜けるか疑心暗鬼
→ 石油エネルギーに変わるエネルギーが近未来に
実用化されるというニュースが伝わるだけで暴落する可能性大
ただし、トウモロコシ等のバイオ燃料は穀物価格高騰を既に招来している
太陽の光と水から作られる水素エネルギー 日本、スイスが開発するのではと
政府が積極的取組姿勢をアピールするだけでも、原油価格は下がる
続く原油価格高騰による日本経済への影響
先週木曜日のトヨタ自動車の2009年3月予想 円高と原油高で減収減益
売上高、営業利益/9期ぶり減収、減益 当期利益/7期ぶり減益
悪くなった、損失が出たのではなく、良過ぎた利益が少し減った
長く続いた円安で大企業は利益蓄積
昨年後半からの円高、原油高にもかかわらず2008年3月期好決算が続く大企業製造業
トヨタ 米GM抜き製造業売上高世界一 売上高、営業、当期利益とも過去最高
マツダ 7年連続売上高、営業、当期利益過去最高
シャープ、松下電工 5年連続売上高、当期利益過去最高
急に企業業績は悪くならないが長く続くとボディーブローが効いてくる
そして原油価格高騰が続いて私達の暮らしが苦しくならないように、
マネーゲームで私たちを苦しめる投機マネーに対抗するために
出来るだけ石油製品の節約 皆の少しずつの積み重ねが大きな需要減に
政府による、もう少しの処まで来ている石油代替エネルギー開発本腰
→
原油価格高騰に歯止め、そして下落を
(SBC信越放送(長野)「モーニングワイド・ラジオJ」2008年05月12日ON AIR)