経済ジャーナリスト 堀 浩司 の “経済コメント”
リーマンブラザーズ経営破綻と原油価格高騰は人災だ
・リーマンが破綻に至った背景(経緯)
6月9日 | 3月-5月決算で上場以来初の赤字。60億ドル緊急増資 |
9月9日 | 韓国産業銀行との交渉決裂 株価急落 韓国の政府系金融機関、韓国産業銀行(KDB)と60億ドル(約6400億円)の出資要請交渉 年初来株価から73%下落 |
9月10日 | 6月-8月決算で最終赤字39億ドル。経営改善策公表も株価続落。 |
9月12日 | 年初来高値から9割超安 |
9月15日 | 連邦破産法第11条適用申請 |
・ 破綻に追い込まれた最大の要因は、
不良債権処理が不十分で、追加損の拡大への懸念がぬぐえなかったこと
・ 株価が一週間で8割近く下げた
・ 米金融機関大手の多くは、損失リスクがある資産を売却せず、評価損を立てるだけで
帳簿上に残してきた。この手法では保有資産の追加損の懸念がつきまとう。
リーマン負債総額6130億ドル(約63兆7500億円)
直近の資産規模6390億ドル(約66兆5千億円)
・ リーマン破綻で世界的な株安が進行、世界経済への影響は?
実体経済は個々の国別だが、金融経済は世界同一の市場にもはやなっている
金融不安は一気に広がり、同じような下落幅で株安の展開
上海4.47%安(16日終値)、ロンドン4.42%安(日本時間16日PM10:30)
NY株9.15終値10,917ドル51セント(△504.48) 2001.9.11以来7年ぶりの下げ幅
9.16終値11.059ドル02セント(+141.51) FRB、政府のAIG支援観測が流れた
実体経済へ不安が広がらないようにしなければ
・
米政府はリーマンを支援せず。その理由は?
3月 JPモルガンに吸収された証券大手ベアー・スターンズ
最大290億ドル分の損失補てん
7月 米財務省とFRBが住宅公社への緊急支援策を発表
米住宅金融市場の大部分を担っているという特別な事情
住宅公社発行債券は「暗黙の政府保証」として海外の中央銀行なども多く保有
両機関の住宅金融市場でのシェアは42%にのぼる。
安易な救済はモラルハザード(倫理の欠如)につながるとして、
公的資金注入を見送り、業界に自ら問題を解決するよう迫った。
リーマンを含めた金融システム全体に対する公的支援に踏み切れば、
財政赤字はさらに膨らみ、ドル安が急加速する恐れ
・
日本の株価も大幅反落。日本経済への影響は?
・ 日経平均株価 一時660円超下げる場面
終値前週末比605円04銭安1万1609円72銭年初来安値更新
・ リーマンに
あおぞら銀行4億6300万ドル(約480億円)、
みずほコーポレート銀行3億8200万ドル等 邦銀16億7000万ドル2575億円融資、債権
担保などで実質的リーマンに対する債権額は大幅に圧縮されると強調
地方銀行610億円債権及び融資
・ 景気悪化で米国向け輸出の一段の減速も懸念される
・ 米国発の金融・資本市場の混乱で懸念されるのは、日本企業経営者や消費者の心理悪化
・ リーマン・ブラザーズ証券(日本法人)
民事再生手続き開始申立て9.16.
負債総額3兆4千億円規模(2000年10月協栄生命保険4兆5千億円についで史上2番目)
個人投資家 これだけ下がった株価 いかに勝機を見出すか
・
アメリカ経済の行方は?
米労働省雇用統計失業率6月5.5%→7月5.7%
4年ぶりの高水準
7月だけで5万1000人の雇用が奪われた 職探しをあきらめた人を含めると失業率は10.3%
08年第2四半期 大量レイオフ1534件29万9886人が失職
実体経済の陰りに、金融不安が付加され、しばらくは景気回復は望めない
2) 原油価格は
原油価格高騰は人災
9.08 宮城県レギュラーガソリン172.8円/g(石油情報センター)5週連続値下がり
(04.9.6/120.5、05.9.5/129.5、06.9.4/143.0、07.9.3/143.4、08.1.7/151.4、08.8.4/184.0)
→ 来月にも5ヵ月ぶりに1リットル160円台に低下する公算が大きい
NY原油先物価格2008.01.02史上初めて100ドル/バレル
07.11(145.18ドル)半年余りで48%高騰
→
9.16終値92.75ドル/バレル(10月渡し)
原油価格下落が続けば、航空運賃、電気料金は来年以降に値下げか
なぜ、原油価格下落が
(1) 世界的な景気減速でガソリンなどのエネルギー需要減
(2) 高騰しすぎた原油価格に世界経済が付いていけない
(3) 米国欧州・先物市場監督機構の商品先物取引委員会(CFTC)
市場の監視強化
→ 有力ファンド7.15以降約390億ドル(約4兆円)原油市場から引き揚げ
でも、まだまだ油断禁物 先物取引 高く売って、安くなって買い戻す
原油価格高騰は、人間の手で作られた激甚災害
2008年版通商白書NYテキサス産軽質油正常価格約75ドル 超分は投機資金
モンスター・ペアレント、・ペーシェント、・カスタマーも人災では
モンスターペアレント
例えば
希望大学に不合格 それまでの教育費、養育費全額要求、応じないと訴えると脅す
(教育評論家尾木直樹法政大学教授)
モンスターペイシェント
たとえば
少しでも待ち時間が長くなると「いつまで待たせるんだ」と医師、看護師を怒鳴りつける
→ 「保護者、患者の消費者意識の暴走」との指摘も
→ モンスターカスタマー、発注者の強い立場を悪用した下請けいじめ
気付かないうちに自分もモンスターカスタマーになっている可能性も
相手に対する思いやりが欠落した社会、人間関係がギスギスしている
前向きな仕事でなく、クレーム処理などに追われ、ストレスと過労が蓄積
司法制度改革でアメリカ並み「言いがかり訴訟」の社会になる可能性も
司法試験合格者数2010年ごろまでに3000人目標(2008年2065人
→ 1990年頃迄500人)
現役弁護士:相談に来ても訴訟より話合いを進めていたことも
→ 過当競争ですべて訴訟に
弁護士数増員は我々の願い?
米国の日本に対する「年次改革要望書」で司法試験合格者1500人以上要求
なぜ → 日本の弁護士 利用金が高く、超エリートで米国企業の言うとおり動かない
→ 合格者数の増大で低価格で使いやすい弁護士誕生
なんで訴えられるか分からない 某テレビ番組 行列のできる○○相談所
市場原理主義、利益至上主義が蔓延しすぎた世の中
利益だけでなく、相手のことを思う心が経済にも必要
でなければ、原油価格高騰のように一生懸命働いている人が苦しむことに
物を作ること、物を売ること、サービスすることに心が伴えば、経済も明るくなる
(TBC東北放送(仙台)「Goodモーニング」2008年09月17日ON AIR)